人の世界でも犬の世界でも、「コロナ太り」という言葉が聞かれるようになりましたが、皆さんの愛犬はどうでしょうか?
コロナ感染症の拡大によって、人も犬も生活が一変し、リモートワークやオンライン授業の普及で家族が家にいる時間が増えた方も多いことでしょう。愛犬と過ごす時間が増え、関係がさらに深まった方もいると思います。
しかし、その分おやつの回数が増えたり、外出が減ったことで体重が増え、悪循環に陥りがちです。暑い夏が過ぎ、秋になるとさらに食欲も増して、体重が増えやすくなる季節です。
愛犬の健康のためにも、適正体重を知り、その子に合った体重管理を心がけて健やかな毎日を目指しましょう。
愛犬を肥満にしないこと
太ると、さまざまな健康リスクが高まります。心臓や血管、足腰の関節などに負荷がかかり、特に足腰には大きな影響を及ぼします。人も犬も、太ることで得られるメリットは一つもありません。
では、愛犬を肥満にさせないためにはどうすれば良いでしょうか。小型犬のように体が小さい犬は、体表面積が大きく、熱が逃げやすいため気温の影響を受けやすい傾向にあります。気温が下がると体温維持のために基礎代謝が上がり、エネルギーが消費されるため、自然と食欲も増します。
また、夏を過ぎて秋になると冬に備えて体内にエネルギーを蓄えようとするため、食欲がさらに増すことが多いです。しかし、食べる量をそのまま増やしてしまうと、確実に体重が増え、健康への影響も懸念されます。増えた体重を減らすのは簡単ではなく、ダイエットを難しく感じる飼い主も多いことでしょう。
犬種や性格によっては、特に太りやすい犬もいます。おっとりとした性格であまり動かない犬に限って、ごはんが大好きだったりします。また、ご年配の方がいるご家庭では、まんじゅうやせんべいなどを犬に与えてしまうこともありますが、これは犬の健康にとって決して良い環境とはいえません。
成長期には少し多めの食事が良いですが、小型犬の場合、成長が落ち着く1歳6か月頃を目安に食事量を見直すと良いでしょう。この1歳から1歳6か月頃の体形を適正体重の目安にし、さまざまな角度から写真を撮っておくことで、後に体形の比較や健康管理がしやすくなります。
愛犬をよく触ってみて、定期的にチェックしよう
犬の種類は多岐にわたり、体重も2kg程度のチワワから、80kgにもなるセントバーナードまで千差万別です。そのため、適正な体型を一概には言えませんが、あばら骨が触れないほど太らせるのは避けるべきです。日常の行動をよく観察し、愛犬の健康状態をチェックしましょう。
太り過ぎのサインに気づくためのポイント
- ソファーにジャンプできない
体重が増えたことでジャンプできなくなっている、または肥満による関節痛で上がれないなどの変化には注意が必要です。しつけでソファーに上がらないのとは大きな違いがあります。普段できていた行動が難しくなった場合は、早めに気づいて対処しましょう。 - かゆいところに足や口が届かない
耳の後ろやしっぽの付け根をかきたがっても、体が届かない場合は肥満の黄色信号です。体勢を変えてもかゆい場所に手足や口が届かないのは、注意が必要です。 - 足の毛が擦り切れたりタコができている
小型犬では目立たないことが多いですが、中型犬以上では肥満により足の毛が擦り切れたり、タコができることもあります。 - 抱っこしたときの感触が変わった
抱っこした際に骨が感じられず、柔らかく感じる場合も肥満の兆候です。体重管理が必要でしょう。 - ゲージやベッドが窮屈そう
以前は余裕があったゲージやベッドが窮屈に見えたり、方向転換が難しそうな場合も肥満のサインです。
病気が原因の肥満にも注意
肥満は単に食べ過ぎだけが原因とは限らず、病気が原因で太ることもあります。以下のような症状が見られたら、病院で相談することをおすすめします。
- 急激に体重が増えた
- 水を大量に飲むようになり、尿量が増えた
- 尿の色が薄くなった
- 食欲がないのに体重が増加
- お腹だけが膨らんでいるように見える
- 食事量が変わらないのに太ってきた
- 歩き方がぎこちなく、痛がってびっこを引く
以上の症状が出た場合、早めに病院での診察を受け、適切な対応をしましょう。
肥満の健康への悪影響と原因
犬が太る原因は食事量と運動不足が関係!
エネルギーの消費と摂取のバランスが崩れると、体に脂肪が蓄積されます。体の維持や運動にはエネルギーが必要ですが、摂取するエネルギーが消費エネルギーを上回ると、その余剰分が脂肪となって蓄積されます。これが、最も単純な肥満のサイクルです。
運動不足が続くと消費エネルギーが減り、肥満が進みやすくなります。しかし、同じ食事や運動量でも、太りやすい犬と太りにくい犬がいるのは、「遺伝的要因」と「環境的要因」が関わっているためです。
犬種によっても太りやすさは異なります。体の大きさや骨格、筋肉のつき方や必要な運動量も犬種によって大きく違い、脂質やアミノ酸の代謝が異なるため、同じ犬とはいえ一概に比較することができません。
また、一度肥満になってしまうと、痩せにくい傾向があるため、日頃から体重管理を意識することが大切です。
太りやすい犬種 | ゴールデンレトリバー・ラブラドルレトリバー・ダックスフンド・シェトランドシープドッグ・パグ・ビーグル・ブルドッグ・フレンチブルドッグ等々です。 |
また、避妊・去勢手術をした犬はホルモンバランスの変化で代謝が悪くなり太りやすい傾向にあります。
これらの犬種の飼い主は環境要因に注意して成長期から肥満のことを念頭に置き接することが大切です。
食事と運動に注意していれば太りやすい犬も太らない
環境的要因として、食事やおやつの量・与え方、カロリー管理、運動の習慣などが肥満に関わります。遺伝的に太りやすい犬種でも、摂取と消費エネルギーのバランスに気をつければ肥満を防ぐことができます。
特に、食べ過ぎに注意しながら、運動量を十分に確保することが大切です。食生活と運動のポイントとしては、栄養バランスを意識しましょう。タンパク質は減らさず、しっかり摂取し、運動で筋肉をつけることが重要です。筋肉がつくことで基礎代謝量が上がり、脂肪が燃焼しやすい体づくりにつながります。
肥満が体に与える影響 | 動くことが億劫になり、ますます太りやすくなる |
愛犬が太ってしまったら【無理のないダイエット】
しつけやトレーニングのご褒美としておやつを使う方も多いかと思いますが、愛犬の「やる気スイッチ」を入れるのはおやつだけではありません。実は、愛犬が一番喜ぶのは、飼い主が喜んでくれる姿です。「かわいい」「いい子」「おりこう」といった褒め言葉を大げさに笑顔で伝えることが、何よりのご褒美となります。
普段からおやつだけでなく、たくさんの褒め言葉を掛けてあげましょう。言葉によるご褒美も、愛犬のモチベーションを高めるには十分です。さらに、おやつの量を控えることでフードとの栄養バランスも保ちやすくなります。健康管理のためにも、おやつはできるだけ少なめにして、褒める言葉で愛犬を応援してあげてください。
理想の体重を目指したフードの量を調節
犬は与えられたものを何でも食べてしまい、時には食べ過ぎて吐き戻してしまうこともあります。これは、野生時代の「食べられる時にできるだけ食べる」という習性が残っているためです。現代では飼い主が食べ物を管理しますが、フードやおやつの量には十分に気をつけましょう。
毎日与えるフードの袋には体重に応じた目安量が記載されていますが、その量が必ずしもすべての犬に適しているわけではありません。愛犬の体形を観察し、個々の状況に合わせて量を調整して適量を見つけてください。気温や季節、地域、運動量など、さまざまな要因が影響するため、一概にこの体重にはこの量とは言えないのです。
万が一肥満になってしまった場合は、理想体重を目標にプログラムを立てて実行しましょう。減量が進むと、体が軽くなり運動が楽しく感じられるようになり、さらにエネルギーを消費できるようになります。
必要な栄養素は維持して摂取カロリーは減らす
食事制限をすると、栄養不足が心配になるかもしれません。高カロリーで栄養価が低い「エンプティ食品」は避け、栄養バランスを考えたフードを与えましょう。カロリーを抑えながら必要な栄養素を摂取するには、シニア用フードやダイエット用フードなどを上手に利用すると良いです。タンパク質、ビタミン、アミノ酸、ミネラルなど、体の維持に不可欠な栄養素が不足しないようにしましょう。
食事制限で物足りなさを感じる場合には、食事回数を増やす、フードに水をかけてふやかして与えるなどの工夫をしてみてください。また、食べにくい食器や知育玩具にフードを入れて時間をかけて食べさせたり、ゆでた野菜をトッピングするのも良い方法です。こうした工夫で、満足感を得ながら健康的な食生活をサポートしましょう。
おやつは1日の摂取エネルギーの10%以内を目安に与える
「総合栄養食」と記載されているフードに加えておやつを与える場合は、1日の摂取カロリーを計算し、おやつは全体のカロリーの10%以内に抑えるようにしましょう。フードやおやつの袋には成分表にカロリーが表示されているので、それを参考にカロリーを調整して与えてください。
また、トレーニングのご褒美としておやつばかり与えていると、カロリーの過剰摂取だけでなく、おやつがないと従わなくなることがあるため注意が必要です。おねだりに負けて制限なしに与えるのも禁物です。
おやつを与えた場合には、その分フードの量を減らし、バランスよく調整するように心がけましょう。
ダイエットの食事とおやつのポイント
犬にとって、ダイエット用のフードはあまり美味しく感じられないことが多く、好んで食べてくれない場合もあります。そんな時は、好きなおやつを小さく切ってフードに混ぜてみるなど、工夫してみましょう。
また、食欲旺盛な犬には、1日の食事量を小分けにして回数を増やすと満足度がアップします。通常の1~2回の食事を3~5回に分けることで、空腹時間を短くでき、満腹感も得られやすくなります。
ご褒美のおやつも、小さく切って細かくすることでカロリーを抑えつつ、満足感を与えることができます。
運動で無理のないダイエット
動かないから、ますます太る負のル―プを断ち切る
犬は本来、散歩や運動が好きな動物です。しかし、体重が増えて動くのが億劫になると、ますます運動を避けるようになり、さらに太るという悪循環に陥りがちです。
野生では、獲物を求めて一日中歩き回り、時には食べ物が手に入らないこともありました。しかし、現代の飼い犬には安定した食生活があり、食べ物に困ることはほとんどありません。それでも「食べられるときに食べておく」という習性は残っているため、運動不足になりやすく、その結果さらに太ってしまうのです。
まずは、この悪循環を断ち切るために、食事管理と適度な運動を少しずつ始めましょう。ただし、太っている状態が体に負担をかけていないかを確認するため、まずは獣医師に診てもらい、健康に問題がないか確認してください。
異常がないと診断されたら、運動を取り入れていきます。食事と運動を続けるうちに、体重が減り、体が軽くなるとともに、愛犬も自分から進んで動きたがるようになります。飼い主も、愛犬が楽しめる遊びを取り入れながら、少しずつ体を動かせるよう工夫してあげてください。こうして、痩せやすく健康的な体を目指しましょう。
燃焼させながら筋肉をつけることが大切で重要
運動には脂肪燃焼効果があり、体内に蓄積された脂肪をエネルギー源として消費することができます。散歩などの軽めの運動でも有酸素運動として効果があり、肥満改善に役立ちます。
ただし、肥満の犬にいきなり激しい運動をさせるのは避けましょう。体重がある分、足腰や関節を痛める原因になりかねません。もし場所や施設がある場合は、水中ウォーキングもおすすめです。浮力によって関節への負担が軽減されるだけでなく、水中では体温維持のためエネルギー消費量も増えるため、効果的です。
運動には筋肉量を増やす効果もあり、筋肉が増えることで基礎代謝も上がり、痩せやすく太りにくい体質へと改善されます。一方、食事制限のみでダイエットを行うと、タンパク質不足になり筋肉量が減少し、基礎代謝が下がる可能性があるため、健康に害を及ぼすこともあります。
健康的なダイエットのために、十分な栄養と適度な運動を心がけましょう。
遊びながらダイエット【アイデア次第で無理のない遊びと運動】
犬は遊びが大好きです、愛犬が喜んで体を動かせるよう工夫しましょう
犬の本能を刺激しながら遊びを取り入れ、十分な運動をさせましょう。ボール投げは短時間でたっぷり運動できる遊びのひとつです。「持ってこい」を覚えさせると、往復での運動が取り入れられ、さらに効果的です。
ボールを自分で持って遊びたがる犬には、ボールの投げる方向や距離を変えたり、高くバウンドさせるなど工夫をして飽きないようにしましょう。夢中になって遊ぶことで、疲れを忘れてエネルギーを発散できます。
コツは、飼い主がボールを拾いに行かなくて済むよう、「持ってこい」をしっかり教えて、楽しみながら運動量を増やすことです。
おもちゃやボールを放さないときの対処 愛犬がおもちゃやボールを放さない場合には、興奮を鎮めるために、持った手を黙って止めます。もう一方の手でおやつをあげると、おやつ欲しさに口を開くのでボールが放れます。と同時に「ちょうだい」と声を掛けて、よく褒めてからおやつを与えます。ちょうだいの意味も同時に教えることが出来ます。
食べ物を探させる遊びは、犬にとって良い運動になります。犬が得意とする嗅覚を使うので飽きることなく楽しめます。おやつやフードを物陰や知的玩具に隠し、愛犬に見えないようにしてからスタートしましょう。さまざまな場所に隠し、探させることでエネルギーを消費でき、犬の本能欲求も満たされて、精神的な満足感を与えられます。不安症の犬の留守番対策にも効果的です。
注意点
食べ物を隠す際、布や紐、簡単に壊れてしまうものは使用せず、誤嚥を防ぐようにしましょう。
また、「かくれんぼ」も効果的な運動になります。体が重くなり歩くのを嫌がる場合でも、少し離れた場所から呼び寄せることで良い運動になります。まずは室内で短い距離から始め、カーテンに隠れて名前を呼んで探させてみましょう。キョロキョロと心配そうに探す姿も可愛いものです。
見つけてもらえたら大げさに褒めてあげ、次第に広い場所でも挑戦しましょう。慣れてきたら屋外で、ゆるやかな坂や上り勾配がある場所で行うと、さらに効果的です。できるだけ毎日続けて足腰の筋力を鍛え、ダイエットにも役立てましょう。
まとめ
やはり、犬にとっても肥満は大敵です。内臓や関節に大きな負担がかかり、良いことは何もありません。特に私の専門であるチワワの場合、200gの増加でも体重の10%に相当し、大きな影響を与えます。人と同じで、一度増えた体重を減らすのは容易ではありませんので、普段から太らないように注意しましょう。
ただし、太らせないためにフードを適量以下にするのは避けてください。栄養不足では本末転倒です。日々の適度な運動と適切なフード量を心がけ、愛犬の健康を守るために適正体重を維持しましょう。
健康な体は、愛犬との良質な生活を築くためにも欠かせません。日頃からの管理で、愛犬が長く健やかに過ごせるようサポートしていきましょう。
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楽しい愛犬ライフを。
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