小さくて可愛いチワワですが、「しつけ」や「トレーニング」となると、つい無関心になったり、後回しにしてしまう方も多いかもしれません。しかし、チワワも犬であり、犬としての本能や社会性を持っています。社会化ができていないと、共に生活する中で困る場面も増え、飼い主と愛犬双方にストレスがかかってしまいます。
問題行動が見られるようになった場合、矯正が必要ですが、これは時間と労力を要するため、早めの対策が効果的です。愛犬が大人になり、社会の一員としてのマナーを身につけるためにも、予防の意味を込めて「パピートレーニング」を取り入れることをおすすめします。
他の人からも「お利口な犬ね」と思われるような、愛されるチワワに育てていきましょう。
チワワの特性を知ろう
誰もが知っているように、チワワは犬の中で最も小さい犬種です。その小ささから、片手で簡単に持ち上げられ、「しつけも簡単だろう」と思われがちですが、小さくてもチワワは立派な犬です。むしろその愛らしさから、甘やかされやすく、わがままになりがちな面もあります。
しかし、チワワが見ている世界には不安や恐怖がたくさんあります。室内でも屋外でも、彼らにとっては不安だらけの環境です。逃げられない状況では、チワワは「大きな声で威嚇しよう」と吠え、強さをアピールしようとします。これが犬としての防衛本能です。
社会化が不足していると、怖さから逃げようとしたり、吠えたり、噛みついたりする行動が出やすくなります。不安を和らげるためには、パピー期からさまざまな経験をさせて「安心していいんだよ」と教えてあげましょう。飼い主が愛犬にとって「神様」のような安心できる存在になれば、チワワも落ち着いて過ごせるようになります。
堂々として安心したチワワは、飼い主にとっても誇りですし、他の飼い主からも憧れの的になるでしょう。チワワも飼い主も、安心で健やかな生活を送るために、社会化と信頼関係の構築は大切です。
チワワが不安を感じやすいもの
- 知らない人、子ども、老人、派手な服装
- 他の犬や大きな犬
- 初めての足元の素材や場所
- 花火、大きな音、足音、インターホン
- 自転車、バイク、掃除機
- 触られること、手入れ など
チワワとの信頼関係を築くためのポイント
- チワワという犬種をよく知る
- 安心できる環境を整える
- 安全を感じさせるために優しく抱きしめる
- 嫌がることはしない、意地悪はしない
- 常に楽しく遊んであげる
チワワの気質
チワワは「敏感で注意深く、活発で勇敢な」犬種です(FCIスタンダード No.218)。愛情を独占したがり、誰にでも愛想を振りまくわけではありません。自分の家族には深い愛情を持ち、時にはより大きな動物にも立ち向かう大胆な一面も。好奇心が旺盛で、屋外の探検を楽しむこともあります。
その小ささゆえに甘やかされやすいですが、パピー期に社会化をせずに甘やかすと、気に入らないと吠えたり噛んだりと、「小さな猛獣」になってしまうことも。しっかりとしたしつけと社会化で、落ち着いた生活を送りましょう。
パピートレーニングで問題行動を予防しよう
パピートレーニングというのは、マテやお座りを教えることではありません。
犬が人間社会で受け入れられるためには、社会のルールやマナーを学び、教えることが大切です。特に子犬期に、飼い主がしつけを通して、愛犬が様々なことに慣れるようにしてあげましょう。
例えば、人に触られること、音、他の犬や人に慣れさせる、トイレトレーニング、ゲージトレーニング、散歩で人について歩く練習、そして遊びの際のおもちゃと、そうでない物の区別を教えることなどが含まれます。教えるべきことはたくさんありますが、子犬に「良いこと」と「ダメなこと」を理解させるためには、言葉(コマンド)を使いながらしつけを進めていきましょう。
かつては、威圧的なしつけが一般的でしたが、今では「怒らずにほめて伸ばす」方法が主流です。飼い主との信頼関係が大切であり、愛犬が「この人についていけば安心だ」と感じられるようにしましょう。
一貫した態度と堂々とした接し方が、犬にとって安心感につながります。人間社会でも、言動が一貫しないと信用を失うのと同様に、犬も飼い主の態度が変わりやすいと不安を感じます。焦らず、愛犬に合わせてトレーニングを行いましょう。
また、より深く理解するために、犬の発達学や学習理論、心理学、行動学などを学ぶのもおすすめです。日本の犬の行動学は、アメリカやヨーロッパに比べて発展が遅れている面もあるため、しつけの重要性を意識して、賢い愛犬を育てていきましょう。
子犬にとって大切な社会化期【生後3週齢~12週齢】
大人になるために一番大切な時期
社会化期には、他の犬や人と触れ合ったり、遊んだりする経験が重要です。将来遭遇するさまざまな刺激—車、見知らぬ人、強風、大きな音、他の犬、トリミングサロンなど—に慣れることで、犬がより社会に適応しやすくなります。
愛犬がマナーよく行動できるようになるためには、飼い主も褒め方やコントロールの仕方を学ぶ必要があります。間違ったしつけをしてしまうと、修正が難しくなるだけでなく、場合によっては他人を傷つける可能性も生じるため、注意が必要です。
近年では、子犬期のしつけを専門とする施設や訓練所も多くあります。そうしたプロのサポートを利用するのも良い方法です。
ワクチン接種とパピートレーニングを始める時期
多くの子犬は、生後約60日前後で新しい飼い主のもとへ迎えられることが一般的です。生後6~8週齢で最初のワクチン接種を受け、4週間後に2回目の追加接種という流れが多いかと思います。この間、多くの獣医師から「外に出さないように」と指導を受けることもありますが、1回目の接種から2週間が経てば、少しずつ外に出し、刺激に慣れさせることが大切です。
子犬が社会性を身につけるのに最適な時期は生後3~12週齢とされています。この時期にさまざまな外の世界に触れさせることで、健康的で楽しい生活を送れる犬に育つでしょう。不特定多数の犬が集まる場所を避ければ、安全に遊ばせられる場所はたくさんあります。リスクを上手に回避しながら、愛犬に社会性を身につけさせることは飼い主の大切な役割です。
パピートレーニングをする際に守るべきこと
絶対に無理はさせないこと、結果を早く求めないこと、やり過ぎないこと、個々の犬に合わせること、愛犬が受け入れられるレベルを見極めましょう。
子犬同士であそばせるときの注意点
同じ月齢の子犬でも、大きさや性格には個体差があり、臆病な子もいれば元気すぎてやんちゃな子もいます。体力差もあるため、遊びの際には飼い主が気をつけて見守りましょう。
遊び相手との性格が合わない場合や、どちらかが一方的に追いかけられている状況は、追いかけられる側にストレスを与えることが多いです。体格差よりも、性格の合う相手と遊ばせることが大切です。特に臆病な子が追いかけられ続けていじけないように注意し、物陰に隠れている子を無理に引っ張り出すことは避けましょう。
子犬同士が追いかけっこをしていると、興奮して口を使い始めることがあります。じゃれているのかケンカしているのか見極めが難しいこともありますが、犬の緊張度や表情を観察して違いを判断してください。また、噛んだり噛まれたりしながら、痛みの加減を学ぶことも大切です。犬同士の噛み合いは正常な遊びであることを念頭に置き、遊びであれば大ケガになることはありません。
複数匹で遊ばせる場合には、飼い主が仲介して「勝てる」「負ける」シナリオを助けてあげると、遊びが長続きします。強すぎる子犬がいる場合は、一時的に手で押さえて遊びに参加させないことで、「どうすれば遊びに入れてもらえるか?」を考える良い機会を与えてあげましょう。
パピートレーニングをする手順【実践編】
犬を飼ったら、愛犬仲間を作ることをおすすめします。他の人や犬に慣れさせることができるだけでなく、いざというときに預かってもらえる心強いサポートにもなります。
初めて他の犬と会わせるときは、先輩犬に愛犬のお尻のニオイを嗅がせるのが良いでしょう。犬同士の挨拶はお尻のニオイを嗅ぐところから始まり、相手のニオイを確認して納得すれば安心できる関係が築けます。
また、他の飼い主からおやつをあげてもらうなどして、見知らぬ人にも慣れさせていきましょう。特にチワワのように小さな犬の場合は、相手にできるだけ低い姿勢でおやつをあげてもらうと安心感を得やすくなります。
愛犬にさまざまな挑戦をさせ、いろいろな状況を経験させて、どんな場面でも落ち着いて対応できるように工夫していきましょう。人や犬、場所に慣れる実践を重ね、動じない社会性を育んでいきましょう。
できたときの ほめ言葉を条件付け
古典的条件付け【パブロフの実験でも有名】
犬は言葉の意味を理解していないと、褒めてもその意図が伝わりません。そのため、してほしい行動や良い行いができたときに、褒めながらおやつのご褒美を与え、言葉の意味を覚えさせていくことが大切です。「よしよし」「お利口さん」といった褒め言葉をかけながら撫でておやつを与え、条件付けをしていきましょう。
褒められることが犬にとっての喜びになり、嬉しく感じるようになれば、次第にやる気を出すようになります。慣れてきたら、徐々におやつを減らし、褒め言葉と愛情表現だけでも伝わるようにしていきます。
また、体を触る、首輪をつける、ブラッシング、爪切り、歯磨きなど、犬が苦手とする行動には、おやつの香りや飼い主の褒め言葉が非常に有効です。ハウスやトイレに誘導する際にも、おやつのニオイを使うとスムーズにいくでしょう。
愛犬が嫌がらずにこうした行動に慣れていけるように、おやつと褒め言葉を上手に活用しましょう。
信頼関係の築き方
愛犬との信頼関係を築くことは、共に暮らすうえで非常に大切で、欠かせないものです。どんな時でも「飼い主が守ってくれる」と愛犬に伝えることが重要です。そのためには、抱きしめて安心感を与えることが最も効果的です。
愛犬を胸の前で抱っこし、少し強めに抱きしめます。愛犬が動こうとしたら、少し力を入れて押さえ、愛犬がリラックスして身を預けてきたら、飼い主も力を抜きましょう。頭や背中、腰、しっぽの付け根まで全身を撫でてあげてください。特に背中やしっぽの付け根、足や肉球をマッサージしてあげると、愛犬はとても喜びます。
また、愛犬にとって少し苦手な姿勢を取らせるときも、優しく声をかけたり、ゆっくり撫でて力を抜くのを待ってあげましょう。リラックスできたら、大げさに褒めて安心感を伝えてください。
まとめ
愛犬を迎え入れたら、すぐにしつけやトレーニングを開始しましょう。早ければ早いほど、愛犬の成長に良い影響を与えます。パピー期にしっかりと教えることで、理想的な成犬に育ちますので、真剣に取り組み、精神的に安定した愛犬を目指していきましょう。
マナーが良く聞き分けのある犬は、多くの愛犬家にとって理想的です。他の飼い主からも「素敵な愛犬だ」と思ってもらえるような成長を見守ることは、飼い主にとって誇らしいものです。
社会性を身につけ、さまざまな刺激に慣れさせることで、多少のことでは動じない強い精神力を養うことも大切です。これらは、愛犬が健やかに生活できるよう、飼い主が果たすべき大切な務めです。
犬に関する悩みや疑問・質問などがありましたら、ご自由にコメント欄に投稿してください。
(コメント欄は、この記事の最下部です)
*いただいたコメントは全て拝見し真剣に回答させて頂きます。
楽しい愛犬ライフを。
コメント